スタジオシステムが灰に消えたあとの路上映画録

葛西祝の路上を記録した映画についてのテキスト

2010年代の路上の映画

通り魔と家族のこと『葛城事件』

『葛城事件』 「三船は1966年(昭和41年)、世田谷区成城に2000坪の土地を買い、3つのスタジオとオープンセットからなる撮影所を作る。 これは個人プロダクションではありえないことで、他のスタープロダクションはせいぜいマネージャーと事務員で構成されて…

『山田孝之の東京都北区赤羽』の頃

『山田孝之の東京都北区赤羽』 Netflixオリジナルドラマ『全裸監督』で80年代のAV監督・村西とおるを演じきり、山田孝之はさらに評価を上げている。近年は俳優のみならず、プロデュース業など活動の幅を広げていることで知られている。 順調にキャリアを広げ…

窓に張る段ボールまでが彼らの世界の果て『岬の兄妹』

『岬の兄妹』 本当のことをいえば、新海誠の『天気の子』は『岬の兄妹』を甘く包み込んだアニメーションだと思った。映画が終わると、泣きながら階段を下りてゆく観客たちが見えた。自分が観たものと、彼らはまったく別の物語を読み取っていたのは確かだった…

秋葉原の事件が目覚めさせた現実を誰も見つめることはない『ぼっちゃん』

www.youtube.com 映画は監督、俳優、撮影スタッフなどの極めて特殊な人的資本を労働集約的に用いる生産部門と、劇場という資本・土地集約的な形態を持った流通部門からなっている。特殊な人的資本と資本を遊休させないのは、経済合理性から発する当然の要求…

日本語ロックとヒップホップの境界線『大和(カリフォルニア)』

『大和(カリフォルニア)』(2018) まず最初に次回(次回の次回かも)予告だが、「路上の映画はいかにジャズやロック、ヒップホップと隣り合ったのか」みたいな内容を書くことを考えている。これは70年代から現在までの日本のインディペンデント系映画が、…

目にしながら認識しない現実『サウダーヂ』

www.youtube.com “1970年代初頭、映画産業の斜陽によって各社は軒並み自社の撮影所を貸スタジオにして独立プロやテレビドラマ、CFの撮影もできるようにし、専属スタッフや俳優も解雇して撮影所システムは崩壊した。”(wikipedia「映画スタジオ」) 『サウダ…